スキンシップゼロ夫婦が離婚する確率は? 離婚手順や慰謝料も解説

2025年12月18日
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スキンシップゼロ夫婦が離婚する確率は? 離婚手順や慰謝料も解説

長野県が公表している統計資料によると、令和4年に長野県では2559件の夫婦の離婚が成立しています。また、令和5年度の司法統計によると離婚理由の第1位は「性格が合わない」ですが、夫婦間のスキンシップがゼロ、もしくはセックスレスになることで離婚を考える方も少なくありません。

では、スキンシップが一切ないことは、法的に離婚理由として認められるのでしょうか。本コラムでは、スキンシップゼロの夫婦の離婚についてベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。


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1、スキンシップゼロ夫婦が離婚する確率

スキンシップゼロの夫婦は実際にどのくらいの確率で離婚しているのでしょうか?

ここでは、まず「スキンシップ」の定義を確認したうえで、実際の統計から離婚との関連性を見ていきます。

  1. (1)スキンシップとは何か

    スキンシップとは、文字どおり「肌と肌との触れ合い」を指します。性交渉に限らず、手をつなぐ、ハグをする、寄り添うといった性行為以外の触れ合いも含まれます

    夫婦生活におけるスキンシップは、安心感や信頼関係をはぐくむために欠かせない大切な要素です。

  2. (2)スキンシップゼロ夫婦が離婚する確率は

    スキンシップゼロということは、一般的に「セックスレス」であることと重なります。日本性科学会によると、「セックスレス」とは特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交や、セクシャル・コンタクト(スキンシップ)がいずれも1か月以上なく、その後も長期にわたることが予想される状態と定義しています。

    裁判所の司法統計によると、「婚姻関係事件数―申立ての動機別 申立人別」のなかには「性的不調和」という項目があります。「性的不調和」とは、セックスレスや性的不能、性的嗜好などの夫婦の性の不一致に関する問題のことです

    令和4年から令和6年の直近3年の司法統計によると、以下のとおり夫側は約10%、妻側は約6%が性的不調和を理由とした離婚を申立てています。

    年度 申立て総数 申立て動機が性的不調和の件数
    令和4年 夫(1万5190) 妻(4万1918) 夫(1670) 妻(2734)
    令和5年 夫(1万5192) 妻(4万1652) 夫(1592) 妻(2642)
    令和6年 夫(1万5396) 妻(4万3033) 夫(1622) 妻(2862)

    申立て件数そのものは妻側が多いものの、「性的不調和」を理由に離婚を申立てる割合は夫側の方が多いのが現状です。

    いずれにしても、夫婦の一定数が「性的不調和」を理由に離婚を求めており、スキンシップがない状態というのは離婚原因になるほど深刻な問題であることがわかります

2、スキンシップゼロ夫婦を卒業するための方法

スキンシップがなくなってしまった関係を改善するには、いくつかの工夫や取り組みが有効です。ここでは、夫婦がスキンシップゼロという状態から卒業する方法についてご紹介していきます。

  1. (1)寝室を一緒にする

    別々の寝室で寝ている場合は、まずは同じ寝室で過ごすことから始めてみましょう。眠りにつくまでのちょっとした時間に会話が生まれやすくなり、自然なコミュニケーションを取ることができます。物理的に距離を縮めることで、スキンシップのきっかけが生まれる可能性もあるでしょう。

  2. (2)疲労・ストレスをなるべく軽減する

    相手が疲労やストレスをためている場合、スキンシップを拒まれてしまうことも少なくありません。家事・育児を分担するなどして、心身の余裕を作ることが大切です。さらに、マッサージや音楽、アロマといったリラックス法を取り入れることで、より自然なスキンシップにつながることもあります。

  3. (3)身体機能に問題がある場合は病院に行く

    高齢や病気、生活習慣の乱れ、ストレスなどが原因で性的機能に不調が出るケースもあります。こうした場合には、男性の場合は泌尿器科、女性の場合は産婦人科を受診して相談してみましょう。専門的なサポートを受けることで改善できる可能性もあります

  4. (4)夫婦でカウンセリングを受ける

    夫婦だけでの解決が難しい場合、セックスレスや夫婦関係のカウンセリングを受けるのもひとつの方法です

    専門のカウンセラーに相談することで、客観的なアドバイスや具体的な解決策を得られる可能性があります。自分たちだけでは気づけなかった改善のヒントが見つかるかもしれません。

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3、スキンシップゼロ夫婦が離婚を進める手順

スキンシップがないことを理由に離婚を進める場合、感情的に行動するのではなく、手順を踏んで準備することが大切です。ここでは具体的な流れを解説します。

  1. (1)離婚条件や今後の生活について考える

    勢いで離婚を切り出す前に、以下の離婚条件について考えておきましょう。

    • ① 財産分与
    • ② 親権
    • ③ 養育費
    • ④ 面会交流


    ① 財産分与
    共有財産(婚姻期間中夫婦の協力によって築いた財産)を離婚時に夫婦で分けることを「財産分与」といいます。原則半分ずつ分けますが、車や家、家具家電の分け方なども考えておきましょう

    ② 親権
    子どもがいる場合は親権者をどちらにするか決める必要があります。

    ③ 養育費
    ケースに応じた養育費の金額相場や実際に請求する金額、支払い方法や支払い期間などを考えておきましょう。

    ④ 面会交流
    離婚後に子どもと離れて暮らす親と子どもとの交流が「面会交流」です。自分が親権を望む場合は面会交流を相手に認めるか、面会交流の頻度、方法などを考えておく必要があります

    離婚条件以外にも、離婚後の仕事や住む場所、子どもを連れて引っ越す場合は転校の有無など、離婚後の生活をどうするかも考えておきましょう。

  2. (2)夫婦で話し合う

    離婚条件がまとまったら相手に離婚の意思を伝えます。

    離婚方法は「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つの方法がありますが、まずは最も利用されている「協議離婚」の成立を目指しましょう。

    協議離婚は他の2つの方法とは異なり、裁判手続きを経ずに、夫婦間協議(夫婦で離婚について話し合うこと)さえ成立すれば離婚手続きを進めることができます。

    離婚条件がまとまったら、公正証書を作成しましょう。公正証書は公証役場で公証人によって作成される公文書であり、養育費や慰謝料といった金銭に関する取り決めがある場合特に重要になります

    たとえば、養育費についてせっかく取り決めたにもかかわらず相手が離婚後支払いを拒否した場合、離婚協議書などの私文書で合意内容について取り決めていた場合は強制執行で相手の財産から強制的に養育費分を回収する手続きをとることはできません。

    しかし、公正証書の場合は、強制執行認諾文言を付けて作成しておくことで、養育費が滞ったときに裁判を行わず強制執行手続きをとることができるのです

    したがって、協議離婚の場合は合意内容に関して公正証書を作成することをおすすめします。

  3. (3)離婚調停を行う

    話し合いが折り合わず、協議離婚が成立しなかった場合は家庭裁判所に「離婚調停」を申立てましょう。離婚調停は、裁判官や調停委員(原則男女1名ずつ)の仲介を受けながら話し合いで離婚問題を解決する手続きです。

    相手と直接顔を合わせずに調停を進めることもでき、調停委員からアドバイスをもらうこともできます。場合によっては和解案を提示されることもありますが、強制ではないため納得できない場合は調停委員の示す和解案に同意する必要はありません。

    調停が成立した場合、調停調書が作成されて調停離婚が成立します。

  4. (4)離婚裁判を行う

    調停不成立の場合は「離婚裁判」を提起しましょう。

    離婚調停と離婚裁判の大きな違いは、あくまでも当事者の話し合いで解決を目指す調停に対し、離婚裁判では裁判官が判決を下すという点にあります。

    裁判官は当事者の主張や提出された資料・証拠を元に判断を下すことになりますが、争点がそもそも「離婚するかしないか」という点である場合、「法定離婚事由」がなければ離婚は認められません。

    「法定離婚事由」とは、民法で定められた裁判上で離婚が認められる離婚原因のことです。

    民法770条1項には以下の5つの離婚原因が定められています。

    • 一  配偶者に不貞な行為があったとき
    • 二  配偶者から悪意で遺棄されたとき
    • 三  配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
    • 四  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
    • 五  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき


    「スキンシップゼロ」が該当する可能性があるのは「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という離婚事由です

    スキンシップがない、セックスレスの状態が「夫婦関係が破綻して婚姻を継続し難い状態だ」と裁判官が判断すれば、離婚が認められます。

    夫婦共に身体的に健康で性交渉に支障がないにもかかわらずスキンシップゼロのケースや、スキンシップゼロにより夫婦関係が悪化して長期間別居しているようなケースでは離婚が認められる可能性があるでしょう。

    一方で、夫婦共に性交渉を望んでいなかったためにスキンシップゼロになっていたケースや、病気や怪我などのやむを得ない事情でスキンシップゼロになっていたようなケースでは離婚が認められない可能性があります。

    裁判官が離婚を認める判断を下し、判決が確定すれば裁判離婚の成立です。

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4、スキンシップゼロを理由に慰謝料請求できるのか

スキンシップゼロを理由に慰謝料請求できるケースと難しいケースがあります。
それぞれのケースを詳しくみていきましょう。

  1. (1)慰謝料請求が可能なケース

    ケースバイケースではありますが、以下に挙げられるケースでは離婚慰謝料が請求できる可能性があります。

    • 夫婦のどちらかが特に理由もなく一方的にセックスを拒絶する
    • 性的不能なことを隠して結婚した
    • 夫婦の双方または一方が不貞行為をしている
    • スキンシップゼロ以外にDVやモラハラがある
    など


    なお、

    • 不貞行為が絡まずスキンシップゼロになっている場合:【慰謝料相場】10万〜100万円程度
    • 不貞行為が原因でスキンシップゼロになっている場合:【慰謝料相場】100万〜300万円程度

    になります。

  2. (2)慰謝料請求が難しいケース

    以下に挙げられるケースでは慰謝料請求は難しいでしょう。

    • 病気や怪我などやむを得ない事情でセックスレスになっている
    • 夫婦共に性交渉を望んでいなかった
    • 3回に1回はセックスに応じるなど、セックスレスの程度が軽い
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5、まとめ

スキンシップが一切ない「スキンシップゼロ」の状態は、裁判手続きにおける離婚動機にも挙げられる「性的不調和」に含まれるほど、夫婦間にとって深刻な問題とされています。

セックスレスやスキンシップの欠如が原因で夫婦関係が破綻し、「婚姻を継続し難い重大な事由」と裁判所に判断されれば、裁判でも離婚が認められる可能性があります。ただし、病気やけがなどやむを得ない事情がある場合や、夫婦共にスキンシップゼロに納得しているといった場合は離婚が認められない可能性が高いでしょう。

裁判に発展する前に問題を解決するためにも、まずは弁護士への相談をおすすめします

弁護士に相談すれば、協議や調停の段階で適切なアドバイスやサポートを受けられるほか、裁判に発展した場合にも必要な証拠や主張を整理して、有利に手続きを進めることが可能です。

スキンシップの欠如で離婚を考えている方は、ひとりで抱え込まずに、ぜひベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士にご相談ください。あなたの状況に合わせた最適な解決策をご提案します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています