レンタカー乗り逃げで科される罪|返さないとどう事件は進む?
- 財産事件
- レンタカー
- 乗り逃げ
2022年、長野県内では自動車を盗んだとして21件が検挙されています。
契約期間が過ぎたレンタカーをいつまでも返さず乗り逃げしていると、罪に問われ、逮捕・起訴されてしまう可能性があります。起訴されれば高い確率で有罪判決となり、前科がつきます。
今回は、レンタカーの乗り逃げで返却しなかった場合に科される罪や刑事事件の流れについて、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。
1、レンタカーを返さないとどうなる?
レンタカーを期限までに返さずにいると、逮捕される可能性があります。そこで、レンタカーを返さないとどのようなことが起こるか、解説します。
-
(1)逮捕される可能性がある
契約期間が過ぎてもレンタカーを返さないと横領罪や詐欺罪として逮捕される可能性があります。
レンタカーを返さないと、レンタカー会社から「いつまでもレンタカーが返ってこない」として、警察に被害届が提出されます。警察の捜査で横領罪や詐欺罪にあたると判断されれば逮捕されることもあるでしょう。たとえ「返すつもりだった」場合でも、返却期間を無視し続ければ、ある日突然に逮捕されるリスクがあります。 -
(2)取り調べを受け起訴される
逮捕されると、警察や検察で取り調べを受けることになります。取り調べの結果、起訴すべき事案と判断されれば裁判となります。裁判では、レンタカーを返さなかったことの罪責について、審理されることになります。
刑事事件は、起訴されれば有罪となる可能性が高いため、起訴前の迅速な弁護活動が非常に重要です。レンタカーの乗り逃げで逮捕の可能性がある場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
2、遅延の連絡をして返さないとどうなる?
-
(1)連絡していても逮捕される可能性がある
契約期間が過ぎたとしても、レンタカー会社に延長する旨の連絡をし、代金を支払えば、トラブルになる可能性は低いでしょう。
ただし、遅延の連絡をしてレンタル代を払っていたとしても、いつまでも返却しないままであれば、レンタカー会社から被害届を提出される可能性があります。被害届が受理され捜査が進めば、逮捕や起訴の可能性があります。 -
(2)連絡を取っているなら弁護士に相談する
レンタカー会社に遅延の連絡を取っていたが、返却の督促がきた場合は、ただちに車を返却し謝罪しましょう。
もしレンタカー会社から被害届を提出するといわれ、多額の遅延金や賠償金を請求された場合は、弁護士に相談することをおすすめします。レンタカー会社が被害届を出すかどうか、提出しても取り下げてもらうことができるかは、早期の交渉にかかっています。
3、乗り逃げをして連絡も取らなかったら?|ケース別の罪と罰則
レンタカーを乗り逃げし、連絡も取らなかった場合、横領罪や詐欺罪に問われる可能性があります。
レンタカーを返さず乗り逃げしてしまった場合、どのような罪が成立し得るか、3つのケース別にみていきましょう。
-
(1)レンタカーの契約後、返したくなくなり乗り逃げした|横領罪
レンタカーを気に入って返却をしたくなくなり乗り逃げした等の場合、横領罪(刑法252条1項)が成立する可能性があります。
横領罪は、「自己の占有する他人の物を横領した者」が処罰の対象となります。「占有」とは、ある物に対して事実上または法律上の支配力があることをいい、レンタカーを借りている場合は、この「占有」にあたります。そして、レンタカーは、レンタカー会社の所有物であるため「他人の物」です。
また「横領」行為とは、他人の物を占有している者が、委託の任務に背いて、その物についての権限がないのに、所有者でなければできないような処分をすることをいいます。
つまり、レンタカーの契約期間しか利用できないはずであるのに、その期間を過ぎても返還せず乗り逃げしている場合、所有者であるレンタカー会社しかできない行為をしており、「横領」にあたると考えられます。
横領罪が成立すると、5年以下の懲役が科されることになります。 -
(2)レンタカーをそもそも返すつもりがないのに借りて乗り逃げした|詐欺罪
レンタカーを返却する気がないのに借りて乗り逃げした場合、詐欺罪(刑法246条1項)が成立する可能性があります。詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させた者」を罰すると規定しています。
「人を欺いて」とは、交付の基礎となる重要な事項を偽ることと考えられています。つまり、借り主はもともと返すつもりがなかったにもかかわらず、レンタカーを期限までに返却するという重要な事項を偽りレンタカーを受領したことは、「人を欺いて」レンタカーという「財物」を「交付させた」といえます。
そのため、そもそも返す意思がなく、乗り逃げするつもりで借りた場合には詐欺罪が成立する可能性があります。詐欺罪が成立すると、10年以下の懲役が科されます。 -
(3)レンタカーを契約することなく乗り逃げした|窃盗罪
そもそもレンタル契約をせずに、レンタカーの乗り逃げをした場合には、窃盗罪(刑法235条)が成立するおそれがあります。
窃盗罪では、「他人の財物を窃取した者」を罰すると規定しています。「窃取」とは、占有者の占有を排除して、その占有を取得する行為です。そのため、レンタカーを持ち逃げすることで、レンタカー会社の占有を排除して自分のものとすることにより「窃取」したといえます。窃盗罪が成立すると、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
また、乗り逃げする際に暴行行為をした場合には、強盗罪(刑法236条1項)もしくは事後強盗罪(刑法238条)が成立し、5年以上の懲役に科される可能性もあります。
さらに、乗り逃げする際にレンタカー会社のスタッフを怪我させた場合には、強盗致傷罪(240条)が成立し、6年以上の懲役が科されます。さらに、そのスタッフが怪我を原因として亡くなった場合には、強盗致傷罪として死刑または無期懲役に処されることになります。
4、刑事事件になってしまった後起こること
前述した通り、レンタカーを返還しないと、逮捕のうえ起訴されるおそれがあります。
以下では、被害届の提出から前科がついた後まで、改めて刑事事件の流れをみていきましょう。
-
(1)レンタカー会社から被害届が提出される
多くの犯罪は、被害者からの被害届の提出によって事件化します。被害届とは、被害者が犯罪被害にあったことを警察に申告する書類です。この被害届が、警察が捜査を開始するきっかけ(刑事訴訟法189条2項「捜査の端緒」)になります。
レンタカーを乗り逃げすると、「レンタカーがいつまでも返ってこない。盗まれた」との被害届をレンタカー会社が警察に提出され、刑事事件になるおそれがあります。 -
(2)逮捕される
警察の捜査によってレンタカーの乗り逃げが確認されると、横領や詐欺の被疑者として逮捕される可能性があります。
逮捕後は、まず警察で取り調べを受け、さらに詳細な取り調べが必要と判断されると、逮捕から48時間以内に検察へ送致されます。その後、24時間以内に検察官が勾留請求の有無を判断します。勾留が必要となれば原則10日間、勾留延長が認められるとさらに10日間、つまり逮捕から最長で23日の間、身柄を拘束されることになります。 -
(3)起訴される
取り調べの結果、起訴する必要があると検察官が判断した場合には、刑事裁判が行われます。裁判では、罪にあたる事実があったかどうか審理され、有罪、もしくは無罪の判決が言い渡されます。
有罪となっても、執行猶予がつけば刑務所には収容されず、更生を前提とした社会生活を送ることができます。しかし、実刑(懲役刑や禁錮刑)が決まった場合には刑期終了まで刑務所で過ごすことになります。 -
(4)前科がつく
前科とは、前に刑罰に処せられた事実をいいます。懲役や禁錮刑の実刑だけでなく、罰金刑や執行猶予の場合にも前科がつきます。
一度前科がつくと、一生消えることはありません。
また、本籍のある市区町村に一定期間、犯罪人名簿として記録が残ります。
もっとも、この名簿を一般の人が見ることはできません。しかし、就職の際に不利になる可能性もあり、教員や警備員、医師などの専門性のある資格は、前科があることで就くことができないなどの制限が生じます。また、パスポートの取得にも制限を受ける可能性があります。
このように前科は人生の節々で影響を及ぼす可能性があります。
5、警察から連絡が来たら弁護士に相談を!
レンタカーの乗り逃げにより警察から連絡が来た場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士がレンタカー会社と示談することで、被害届を取り下げてもらうことができるかもしれません。逮捕・起訴を免れるためには、迅速な対応が重要です。
また、逮捕されてしまったとしても、レンタカー会社に心から謝罪し、被害弁償をすることで不起訴処分となり、前科を免れる可能性もあります。
もっとも、謝罪を受け入れ示談に応じてくれるか、被害届を取り下げてくれるかは、レンタカー会社次第になるため、弁護士を介して慎重に交渉を進めることが大切です。
お問い合わせください。
6、まとめ
レンタカーを契約期限内に返却しないと、逮捕される可能性があるので注意が必要です。また、レンタカー会社に返却の遅延連絡をした、レンタカー代を支払うつもりだったとしても、状況によっては、横領罪や詐欺罪が成立するおそれがあるため、被害届が出される前に、迅速に対応することが重要です。
ベリーベスト法律事務所 長野オフィスには、さまざまな刑事事件の解決実績がある弁護士が在籍しています。まずは、状況を伺い、最善の解決策を一緒に考えます。レンタカーの乗り逃げや、返還のトラブルでお困りの際は、当事務所までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|