口コミの「やらせ」が違法となる具体的ケースとペナルティのリスク
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2023年に長野市に寄せられた市民相談のうち、消費生活に関わる相談は2092件でした。
自社の商品、サービス、店舗などをよく見せるため、不適切な方法で口コミ(レビュー)を書かせたり、事業者が口コミを捏造(ねつぞう)したりする行為は「やらせ」と言われることがあります。
本記事では、口コミの「やらせ」が違法となるケースや、関与した企業が負うリスクなどをベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。
出典:「長野市統計書」(長野市)
1、口コミの「やらせ」は違法?
口コミの「やらせ」とは、商品やサービスを販売する事業者が、顧客に好印象を抱かせるために、不適切な方法で口コミを書かせたり、口コミを捏造したりする行為です。
たとえば、以下のような行為が口コミの「やらせ」に当たります。
- 実際には商品を購入していない人に、販売事業者が報酬を支払って好印象の口コミを書いてもらった。
- 販売事業者の従業員が、自社商品について好印象の口コミを書き込んだ。
次の項目で解説するように、口コミの「やらせ」は景品表示法違反に該当する可能性があります。事業者は、自社が販売する商品やサービスについて、口コミの「やらせ」が行われないように注意しなければなりません。
2、口コミの「やらせ」が違法となるケース
景品表示法では、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「ステルスマーケティング」などが禁止されています。これらに該当する口コミの「やらせ」をした場合は、景品表示法違反の責任を問われる可能性があります。
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(1)優良誤認表示に当たる場合
「優良誤認表示」とは、以下のいずれかに当たる表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものをいいます(景品表示法第5条第1号)。
- ① 商品やサービスの品質・規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると示すもの
- ② 商品やサービスの品質・規格その他の内容について、事実に相違して競合他社のものよりも著しく優良であると示すもの
たとえば、事業者が「利用者の体験談」などと称して、以下のような口コミを紹介した場合は優良誤認表示に当たります。
- 実際にはカシミヤが80%程度しか含まれていないセーターについて、「カシミヤ100%だから高級感があって大満足!」という口コミを紹介した。
- 効能や効果について学問的な根拠がないダイエット食品について、「誰でも簡単に10kgは痩せられると思います!」という口コミを紹介した。
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(2)有利誤認表示に当たる場合
「有利誤認表示」とは、以下のいずれかに当たる表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものをいいます(景品表示法第5条第2号)。
- ① 商品やサービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると示すもの
- ② 商品やサービスの価格その他の取引条件について、競合他社のものよりも著しく有利であると示すもの
たとえば、事業者が「利用者の体験談」などと称して、以下のような口コミを紹介した場合は有利誤認表示に当たります。
- 実際には厳しい返品条件が設定されているのに、「いつでも返品できるので安心です!」という口コミを紹介した。
- 実際には50万円で販売されたことがないのに、「以前は50万円で売っていたのを見たことがありましたが、10万円で買えて超お得でした!」という口コミを紹介した。
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(3)ステルスマーケティングに当たる場合
「ステルスマーケティング」とは、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示をいいます(景品表示法第5条第3号、消費者庁告示)。
令和5年10月1日から、ステルスマーケティングが新たに景品表示法違反の不当表示に指定されました。
たとえば、事業者が以下のような形で口コミを投稿させた場合は、ステルスマーケティングとして景品表示法違反に当たる可能性が高いと考えられます。- インフルエンサーに依頼して、商品について好印象のSNS投稿をしてもらった。その際、投稿者であるインフルエンサーは、事業者から依頼された広告であることを明記しなかった。
- クラウドソーシングサイトで人を募集し、集まった人(=サクラ)に対して報酬を払ったうえで、口コミサイトで自社商品に関する好印象のコメントを大量に投稿させた。
- 口コミ代行業者に依頼して、口コミサイトで自社商品に関する好印象のコメントを大量に投稿させた。
お問い合わせください。
3、口コミの「やらせ」をした企業が負うリスク
口コミの「やらせ」をした企業は、消費者庁長官の措置命令や課徴金納付命令、さらに刑事罰を受けるリスクを負います。また、適格消費者団体から差止請求を受けるおそれもあります。
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(1)措置命令を受ける
景品表示法違反の不当表示をした事業者は、消費者庁長官による措置命令を受けることがあります(景品表示法第7条)。
措置命令とは、違反行為をした企業やお店に、速やかにその行為をやめ、市場における競争を回復させるのに必要な措置を命じる行政処分を言います。
口コミの「やらせ」も、優良誤認表示、有利誤認表示またはステルスマーケティングに当たる場合は措置命令の対象となります。
措置命令を受けた事業者は、その内容に従って該当する口コミや情報を削除し、「やらせ」の再発防止措置をとるなどの対応が求められます。
また、措置命令を受けた事実は消費者庁のウェブサイトで公表されます。景品表示法違反の事実が公表されると、企業としての評判が大きく低下してしまうおそれがあるので要注意です。 -
(2)課徴金納付命令を受ける
優良誤認表示または有利誤認表示をした事業者に対しては、原則として消費者庁長官が課徴金の納付を命じます(景品表示法第8条)。
課徴金の額は、優良誤認表示または有利誤認表示をしていた期間において、該当する表示に係る商品やサービスについて得られた売上の3%相当額です。
たとえば、ある商品について「やらせ」の口コミを3年間にわたって掲載し、その間に3億円の売上を得た場合は、900万円の課徴金の納付が命じられます。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は、課徴金納付命令の対象外となります。- 事業者が対象期間を通じて、優良誤認表示または有利誤認表示に当たることを知らず、かつ知らないことにつき相当の注意を怠らなかったとき
- 課徴金の額が150万円未満であるとき
なお、ステルスマーケティングに当たる口コミを投稿させたに過ぎない場合は、優良誤認表示や有利誤認表示に当たらない限り、課徴金の納付が命じられることはありません。
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(3)刑事罰を受ける
故意に優良誤認表示または有利誤認表示を行った者は「100万円以下の罰金」に処されます(景品表示法第48条)。
また、法人に対しても両罰規定によって「100万円以下の罰金」が科されます(同法第49条第1項第2号)。
たとえば、事業者が意図的に捏造した口コミを紹介した場合は、直ちに刑事罰の対象になり得るので注意が必要です。
また、措置命令に違反した者は「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます。懲役と罰金が併科されることもあります(同法第46条)。
さらに、法人にも両罰規定によって「3億円以下の罰金」が科されます(同法第49条第1項第1号)。 -
(4)適格消費者団体から差止請求を受ける
優良誤認表示または有利誤認表示に当たる口コミの「やらせ」については、措置命令などを受けていない段階でも、適格消費者団体から差し止めを請求されるおそれがあります(景品表示法第34条)。
適格消費者団体の差止請求は訴訟に発展することもあり、企業はその対応にコストや労力を費やさなければなりません。また、差止請求が認められた場合には、口コミの削除や再発防止などの対応が求められます。
参考:「適格消費者団体・特定適格消費者団体とは」(消費者庁)
4、企業法務について弁護士に相談するメリット
景品表示法違反に当たる口コミの「やらせ」を防ぐため、およびその他の企業法務に関するトラブルを避けるためには、弁護士に相談することをおすすめします。
企業法務に関して、弁護士に相談することの主なメリットは以下のとおりです。
- 自社の業務が法令に準拠しているかどうかについて、専門的なアドバイスを受けられる
- 監督官庁から違法性を指摘された際にも、適切な説明や対応ができるようにサポートを受けられる
- 顧客からのクレームへの適切な対応についてアドバイスを受けられる
- 訴訟などの裁判手続きが必要になった場合は、弁護士が代理人として対応できる
- コンプライアンス違反のリスクが抑えられ、企業としての信頼向上につながる
顧問弁護士と契約すれば、事業に関する法的な悩みをいつでもスムーズに相談できます。景品表示法対策を含めて、コンプライアンスを強化したい企業は、顧問弁護士との契約をご検討ください。
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5、まとめ
口コミの「やらせ」は、景品表示法違反に該当するおそれがあります。「やらせ」に関与した事業者は、消費者庁長官の措置命令や課徴金納付命令、刑事罰などの対象になり得るので注意が必要です。
企業は景品表示法の問題を含めて、法律に関するさまざまな問題に直面します。適切かつ臨機応変に対応するためには、弁護士のサポートを受けるのが安心です。
ベリーベスト法律事務所は、企業法務に関するご相談を随時受け付けております。弁護士だけでなく、税理士や社会保険労務士も所属しており、各士業が連携して高品質のサポートをご提供いたします。
企業法務に関するアドバイスや、顧問弁護士との契約などをご希望の企業は、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
