景品表示法は企業間取引にも影響するのか?

2024年11月20日
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景品表示法は企業間取引にも影響するのか?

景品表示法は一般消費者の保護を目的としているため、企業間取引において問題になることはほとんどありません。

その一方で、企業間取引には独占禁止法の規制が適用されます。抵触のおそれがある場合や回避の方法を知りたい場合は、すみやかに弁護士のアドバイスを求めることをおすすめします。

本記事では、景品表示法が企業間取引に適用されるのかどうか、独占禁止法と景品表示法の関係、および企業間取引に関するコンプライアンスのポイントなどをベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。

1、企業間取引(事業者間取引)にも景品表示法は適用されるのか?

結論からいうと、景品表示法の規制が問題になるケースは少ないと考えられます。景品表示法の目的は一般消費者の保護であるためです。

以下、景品表示法とは具体的にどのような行為を禁止する法律か、解説します。

  1. (1)景品表示法による規制の概要

    景品表示法では、主に景品類の制限・禁止および不当表示の禁止が定められています。

    ① 景品類の制限・禁止
    事業者が一般消費者に対して提供する景品類について、限度額などが定められています。
    参考:「景品規制の概要」(消費者庁)

    ② 不当表示の禁止
    優良誤認表示や有利誤認表示など、一般消費者に誤認されるおそれがあり、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害し得る表示が禁止されています。
    • ※優良誤認表示:商品・サービスの品質・規格その他の内容に関する不当表示
    • ※有利誤認表示:商品・サービスの価格その他の取引条件に関する不当表示
    参考:「表示規制の概要」(消費者庁)


    景品表示法に違反した事業者は、消費者庁による措置命令等の対象となります。

  2. (2)景品表示法の目的は一般消費者の保護|企業間取引では問題になりにくい

    景品表示法は、一般消費者の利益の保護を目的としています(景品表示法第1条)。

    そのため、景品表示法における規制も、事業者の一般消費者に向けた行為について適用されます。たとえば、事業者の一般消費者に対する景品類の提供行為や広告表示などです。

    したがって、事業者同士が行う企業間取引については通常、景品表示法の規制が問題になることはありません。

2、企業間取引には独占禁止法が適用される

企業間取引には景品表示法の規制が適用されませんが、その一方で独占禁止法の規制が適用されます。

特に独占禁止法における不当顧客誘引規制や、その他の不公正な取引方法に関する規制については、企業間取引の条件設定に当たって留意する必要があります。

  1. (1)独占禁止法と景品表示法の関係

    景品表示法は、独占禁止法の特別法に当たります。

    独占禁止法では、相手方をだますような勧誘行為(ぎまん的顧客誘引)や、相手方に不当な利益を与えた上でする勧誘行為(不当な利益による顧客誘引)が禁止されています。

    景品表示法は、ぎまん的顧客誘引や不当な利益による顧客誘引に当たる行為のうち、特に消費者との関係で問題が大きいと考えられる「不当表示」と「過大な景品類の提供」を取り上げて、さらに規定を具体化したものです。

    したがって、一般消費者向け取引(BtoC)には景品表示法が適用される一方で、企業間取引(BtoB)については、一般法である独占禁止法が適用されることになります

  2. (2)独占禁止法における不当顧客誘引規制

    独占禁止法では、事業者間の公正かつ自由な競争を促進する観点から、事業者が「不公正な取引方法」を用いることを禁止しています(独占禁止法第19条)。

    景品表示法において一般消費者向けに禁止されている行為に対応して、独占禁止法では以下の不当顧客誘引に関する規制が設けられています(独占禁止法第2条第9項6号、一般指定第8項・第9項)。

    ① ぎまん的顧客誘引
    事業者は、自己の供給する商品・サービスの内容や取引条件、その他これらの取引に関する事項について、実際のものまたは競争者に係るものよりも著しく優良または有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引してはなりません。

    ② 不当な利益による顧客誘引
    事業者は、正常な商慣習に照らして不当な利益をもって、競争者の顧客を自己と取引するように誘引してはなりません。
    たとえば、あまりにも多額の報奨金やサービスを受ける権利などを与えて、競合他社から取引先を横取りしようとする行為は、不当な利益による顧客誘引に当たる可能性が高いです。
  3. (3)独占禁止法によって禁止される、その他の不公正な取引方法

    独占禁止法では、上記の不当顧客誘引に関する規制(ぎまん的顧客誘引・不当な利益による顧客誘引)のほか、以下の行為を「不公正な取引方法」として禁じています(独占禁止法第2条第9項、一般指定)。

    • 共同の取引拒絶
    • その他の取引拒絶
    • 差別対価
    • 取引条件等の差別取扱い
    • 事業者団体における差別取扱い等
    • 不当廉売
    • 不当高価購入
    • 抱き合わせ販売等
    • 排他条件付取引
    • 拘束条件付取引(再販売価格の拘束など)
    • 取引の相手方の役員選任への不当干渉
    • 競争者に対する取引妨害
    • 競争会社に対する内部干渉
    • 優越的地位の濫用
    参考:「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)
    」(公正取引委員会)

3、企業間取引の条件を適正化するためには? コンプライアンスのポイント

企業が他の事業者と取引をする際には、独占禁止法の規制を順守するため、特に以下のポイントに留意して対応しましょう。



  1. (1)相場を踏まえた公正な価格を設定する

    企業間取引において、相場からかけ離れた取引価格を設定すると、公正取引委員会に独占禁止法違反を疑われるおそれがあります。

    差別対価・不当廉売・不当高価購入は不公正な取引方法とされているほか、相手方事業者に対する優越的な地位を濫用して、著しく不利な取引条件を押し付けることも不公正な取引方法に当たります。

    事業者としては、企業間取引の価格が適正な範囲に収まっているかどうか、相場を踏まえて適切に判断すべきです

  2. (2)商品・サービスの内容や取引条件をごまかさない

    他の事業者に提供する商品やサービスの内容について、実際のものや競合他社のものよりも著しく優良であると相手方に誤認させるような表示は、ぎまん的顧客誘引として独占禁止法違反に当たります。

    また、他の事業者に提供する商品やサービスの取引条件(価格など)について、実際のものや競合他社のものよりも著しく有利であると相手方に誤認させるような表示も、ぎまん的顧客誘引として独占禁止法違反に当たります。

    企業間取引においても、景品表示法が適用される一般消費者向け取引と同様に、商品やサービスの内容や取引条件をごまかすような説明や価格表示は避けるべきです

  3. (3)弁護士のアドバイスを受ける

    独占禁止法の規制を適切に順守するためには、弁護士に相談するのが安心です

    企業法務や競争法に精通した弁護士に相談すれば、独占禁止法違反を指摘されやすいポイントを踏まえて、企業間取引の条件等を適正化するためのアドバイスを受けられます。

    独占禁止法を順守し、企業間取引におけるコンプライアンスを徹底することは、損害賠償や行政処分などのリスク回避につながります。ベリーベスト法律事務所では、月額3980円からの顧問弁護士サービスもご用意しています。まずはお気軽にご相談ください。

4、企業が顧問弁護士を契約するメリット

独占禁止法の問題を含めて、企業は日々の事業活動においてさまざまな法律問題に直面します対応を誤ると、措置命令等の行政処分の対象になることや課徴金を課されるなどのリスクを負ってしまうので、あらかじめ弁護士のアドバイスを受けながら適切に対応しましょう

法律問題へ適切に対応するためには、弁護士と顧問契約を締結するのがおすすめです。顧問弁護士と契約すれば、法律問題について日常的に相談できます。また、コンプライアンスに関する社内体制の整備についても、企業の実態を踏まえたアドバイスを受けられるようになります。

コンプライアンスの基盤を強化し、安定的な事業運営を行いたい企業は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。各社のご予算やお悩みに合わせた最適な顧問弁護士サービスをご提案いたします。

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5、まとめ

景品表示法は基本的に、企業間取引には適用されません。その一方で、企業間取引には独占禁止法が適用されます。景品表示法によって禁止されている不当表示などは、独占禁止法でも「不公正な取引方法」として禁止されている点に注意が必要です。

独占禁止法を順守し、企業間取引に関するコンプライアンスを徹底するためには、顧問弁護士と契約するのが安心です

ベリーベスト法律事務所には、企業法務の実績がある弁護士が多数在籍しており、クライアント企業のニーズに応じてご利用いただける顧問サービスもご用意しております。

企業間取引に関するコンプライアンス対策については、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています