恋愛詐欺とは? 犯罪の手口や被害にあったときの対処法について解説
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恋愛感情をダシにして金銭をだまし取る、いわゆる「恋愛詐欺」と呼ばれる行為は犯罪にあたります。数ある詐欺の手法のなかでも恋愛詐欺は特に被害に気づきにくく、気づいたときには多額の金銭を渡したあとだったり、相手と音信不通になっていたりするという点が特徴的です。
本コラムでは「恋愛詐欺」とはどのような犯罪なのか、類似する詐欺や悪質商法の手口、もし被害に遭ってしまった場合の返金・解決に向けた方法などを解説します。
1、恋愛詐欺とは? 詐欺罪が成立する要件と典型的な手口・特徴
新聞やニュースのほか、ドラマや小説といったフィクションの世界でも「〇〇詐欺」といった表現はたびたび登場します「恋愛詐欺」もそのひとつですが、刑法上は「恋愛詐欺」という名称の犯罪は明記されていません。
恋愛詐欺は、刑法第246条に規定されている「詐欺罪」の手口のひとつにあたります。
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(1)詐欺罪とは? 成立する要件や罪の重さ
詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた者」を罰する犯罪です。簡単にいえば、嘘をついて金品などをだまし取った者が処罰の対象になると考えておけばよいでしょう。
ただし、単に「嘘をついた」「お金を要求した」というだけでは、詐欺罪は成立しません。
詐欺罪が成立するのは、次の3点を満たす必要があります。- 欺罔(ぎもう) 金品などを交付するか判断するに当たって重要な事実について「嘘」をつく行為です。欺罔は、続く錯誤・交付へと連動する必要があります。
- 錯誤 嘘を申し向けられた相手がその嘘を信じ込んでだまされた状態です。つまり「嘘だとわかっていた」というケースでは錯誤がないので詐欺罪が成立しないことになります。
- 交付 錯誤に陥った相手が、自ら金品などを差し出す行為です。「処分行為」ともいいます。加害者が無断で金品を持ち出したり、預けていた物をネコババされたりしたケースでは、窃盗罪や横領罪といった別の犯罪が成立します。
この、欺罔・錯誤・交付という一連の流れに連動して、財物が加害者の支配下に移転すれば、詐欺罪が成立します。
詐欺罪には、10年以下の懲役刑が予定されています。罰金の規定はなく、有罪になれば必ず懲役が科せられる重罪です。 -
(2)恋愛詐欺にあたる典型的な行為と特徴
詐欺罪は、嘘の名目や対象となる財物などに応じて「手口」で分類されています。
警察庁が定めている詐欺罪の手口分類には「恋愛詐欺」という名称は存在していないので、正確な定義はありませんが、恋愛詐欺とは「恋愛感情をダシにして金銭などをだまし取る行為」を指すのが一般的です。
典型的なケースとしては、次のようなかたちが考えられるでしょう。- 男女として交際関係を築いたうえで「交際を続けたいが多額の借金があるので難しい、肩代わりしてくれれば交際を続けられる」といい、借金返済に充てる名目で金銭交付を受ける
- 大病を患っており多額の治療費が必要だと嘘をつき「治療費を負担してもらえれば交際できる」と期待させて、治療費の名目で金銭をだまし取る
ポイントとなるのは、嘘が金銭などをだまし取るという結果につながるものかどうかという点です。
たとえば、借金返済を名目にしたケースに照らすと、被害者からみて「多額の借金があるという話が嘘だと最初からわかっていれば、金銭を渡すことはなかった」という場合は、詐欺罪が成立する可能性が高いでしょう。
恋愛詐欺は、男女交際が背景にあるため、被害者が詐欺に遭っていることに気づきにくいという特徴があります。相手が素性を明かさない、交際期間が短いのに多額の金銭要求を受けたといった状況があるなら、恋愛詐欺を疑ったほうがいいかもしれません。
また、近年ではSNS、婚活パーティーやお見合いパーティーを通じて知り合った相手とのトラブルが多発しています。当然、これらがきっかけで始まった交際のすべてが怪しいわけではありませんが、傾向のひとつとして覚えておくとよいでしょう。
2、恋愛詐欺に近い悪質・違法行為とは?|デート商法・結婚詐欺
恋愛詐欺と呼ばれている手口に近い悪質商法や別の違法行為もあわせて確認していきます。
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(1)デート商法
男女交際を期待させて高額商品などの購入を契約させる行為が「デート商法」です。セールス目的を隠して、まるでデートをしているかのように装うため、このような名称で呼ばれています。
嘘をついて被害者を誘導する点は恋愛詐欺と似ていますが、単に金銭をだまし取るのではなく、商品やサービスの契約といった正規の取引を装うのが特徴です。
かつては社会経験が浅い学生などが被害に遭うケースが多くありましたが、セールスの目的を隠して誘導する行為は特定商取引法を根拠とした「クーリングオフ」の対象となります。
期間内に手続きをすれば、契約者側から一方的に契約を解除できる制度なので、解決は比較的に難しくありません。 -
(2)結婚詐欺
恋愛詐欺と非常に近い存在にあるのが「結婚詐欺」です。
結婚詐欺とは、結婚を名目に金銭をだまし取る手口で、警察庁による詐欺罪の手口にも分類されています。
たとえば、既婚者を装って「あなたと結婚したいが、配偶者に慰謝料を支払わないと離婚できない」と嘘をつき、実際は離婚するつもりも慰謝料の要求を受けた事実もないのに、あたかも金銭を渡せば離婚が実現して自分と結婚できると誤信させ、金銭交付を受けるといったケースが典型的です。
恋愛関係をダシにしているのか、それとも結婚をダシにするのかという違いがあるだけで、恋愛詐欺と結婚詐欺には大きな差がありません。
なお、結婚を前提に交際していながらも実際には相手に結婚の意思がなかったり、あるいは実は既婚者であったりしても、嘘が金銭などの交付に向けられたものでなければ結婚詐欺は不成立です。
婚約したのに結婚をしなかったといったケースも、財物をだまし取られたとはいえないので結婚詐欺ではありません。
3、相手から返金してもらいたい! 誰に相談すればいい?
恋愛詐欺の被害に遭い、相手に渡した金銭や物品を返してもらいたいと望む場合は、どうすればよいのでしょうか?
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(1)できる限りの証拠収集・保全を急ぐべき
まず急ぐべきは、自分でできる限りの証拠を集めることです。
金銭や物品の返還を求めるためには、相手がどこに住んでいる、何という人物なのか、身元をはっきりさせなければなりません。
聴き知っている氏名や住所は嘘かもしれないので、身分証や郵便物を確認してスマホで撮影しておく、勤務先に本当に在籍しているのかを問い合わせるといった確認が必須です。
また、恋愛詐欺という犯罪行為があったことの証拠も集めておく必要があります。相手の嘘や金銭要求を証明するメール・メッセージ・手紙・会話の録音、金銭を渡した事実を証明する口座の明細・受取証などが証拠になるので、もれなく保管しておきましょう。 -
(2)恋愛詐欺の相談先
だまし取られた金銭を取り返すためには、詐欺トラブルを解決するための知識や経験をもっている専門家のサポートが欠かせません。
恋愛詐欺の被害は、ここで挙げる窓口で相談できます。- 警察 詐欺事件の被害に遭ったときは、住所地を管轄する警察署や最寄りの交番で相談できます。ただし、警察にできるのは刑事事件としての捜査です。加害者の逮捕や刑事裁判へと続く手続きを進める役割なので、返金のサポートは期待できません。
- 非営利の被害者救済団体 恋愛詐欺を含めて男女間のトラブルを解決するために設立されている非営利の被疑者救済団体への相談も可能です。非営利の団体なので、相談料はかからないため、気軽に相談できる窓口としては便利です。ただし、団体の職員には豊富な知識と経験をもっていても、被害者の代わりにはなれません。返金を求めるアクションも、アドバイスを受けながら自分で進めることになります。
- 弁護士 加害者の特定や返金を求める交渉・訴訟、刑事事件としての届け出などをすべて被害者の方に代わって進めることができるのは弁護士だけです。そもそも恋愛詐欺なのかの見極めから、法的手続きや慰謝料請求まで状況に応じて幅広く対応できるので、弁護士への相談・依頼によって解決に向かって前進できる可能性は高いでしょう。
4、恋愛詐欺の相談で弁護士に期待できること
「恋愛詐欺かもしれない」と感じたら、まずは弁護士への相談を急ぐことをおすすめします。
恋愛詐欺のもっとも特徴的な部分は「被害者自身が『詐欺被害に遭っている』と気づきにくいこと」です。恋愛に夢中で、嘘を見抜くどころか、不審点があっても相手のことを「怪しい」と疑うことさえできなくなります。
しかし、詳しい状況を弁護士に伝えれば、恋愛詐欺をはじめ、デート商法や結婚詐欺といった被害に気づくきっかけになるでしょう。
被害に遭っていることが判明すれば、返金に向けたサポートも期待できます。加害者の身元特定、返金に向けた交渉、返金を拒んだ場合の裁判手続きといった対応が可能なので、自分ひとりでは解決が難しいと感じたら弁護士に依頼したほうが賢明でしょう。
また、詐欺事件としての刑事告訴もサポート可能です。特に、詐欺事件ではなぜ詐欺だといえるのかを客観的に示す証拠の存在が重要になります。
被害者自身が警察に相談してもなかなか動いてもらえないといったケースは少なくないので、弁護士が代理人となって届け出をしたほうがスムーズです。
5、まとめ
恋愛詐欺は、恋愛感情に乗じて金品などをだまし取る悪質な犯罪です。被害を防ぐには、たとえ恋愛関係にある場合でも詳しい事情を確かめないまま金銭要求に応じたり、恋愛関係を成就させたいばかりに高額商品の購入に応じたりしないといった慎重さが欠かせません。
しかし、詐欺・悪質商法をたくらむ相手は狡猾で、注意を払っていても巧みに近寄ってきます。もし恋愛詐欺の被害に遭っているかもしれないと感じたら、すぐに弁護士に相談して診断を受けたほうがよいでしょう。
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- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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