婚前契約書とは|作成するメリットと注意点を解説

2024年04月02日
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婚前契約書とは|作成するメリットと注意点を解説

婚前契約書は、結婚前に結婚後のルールや離婚した際の財産分与などを決める契約書です。結婚後のトラブルを起こさないためにも、作成しておくことも選択肢のひとつでしょう。

そこで今回は、婚前契約書の概要やメリット・デメリット、注意点について、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。


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1、婚前契約書とは

婚前契約書とは、夫婦となった後の結婚生活や財産分与などの約束を、結婚する前の段階で取り交わした契約書のことをいいます。結婚契約書、婚前誓約書、夫婦財産契約書などとも呼ばれており、夫婦となる男女の双方が署名します。

婚前契約書の内容は原則として、自由に決めることが可能です。例えば、以下のようなことを決めることができます。

  • 不貞行為を行った場合の対応について
  • 離婚時の財産分与について(折半する、折半せずに自身が築いたものは自分のものとするなど)
  • 子育てや家事などの役割分担について
  • 両親の介護について
  • 婚前契約に違反した場合の対応について


結婚する際にお互いに不安なことや、結婚した後に気になることを事前に話し合ってから取り決めることが大切です。

  1. (1)婚前契約書には法的効力があるのか

    婚前契約書は夫婦となる男女間の契約としての意味を持つため、原則として法的効力を持ちます。自作した私文書であっても、弁護士などに作成を依頼した合意文書であっても、法的拘束力が生じることになるのです。

    ただし、契約書に違法な内容が含まれる場合や、契約内容が法律上の制限に違反している場合は、その部分については法的効力が発生しない可能性があります。たとえば、以下の内容が挙げられます。

    • 不貞行為が発覚した場合は相手に1億円を支払う
    • 離婚の際に子が複数人いる場合、少なくとも子の1人は、夫または妻が親権者となる
    • 日常生活に関連する契約について、夫または妻は一切責任を負わない


    このような、常識では考えくい法外な慰謝料や、子の親権について事前に規定している内容、または夫婦の日常生活において連帯責任を無視する内容などは無効となる可能性が高いでしょう。

  2. (2)婚前契約書を作成する流れ

    婚前契約書を作成する流れは以下のとおりです。

    • 双方による話し合い
      婚前契約書を作成する前に、結婚を検討している双方で事前に話し合いを行う必要があります。具体的には、財産分与、相続、借金、扶養義務、子育てなど、結婚後に問題になる可能性がある事項を含め、どのような状況に直面する可能性があるかを共有することが大切です。
      話し合いの際には、お互いが持つ財産や収入、債務の状況なども共有しなければなりません。さらに、価値観や生活スタイルについても話し合いを行い、結婚後に生じる可能性がある問題を予測し、婚前契約書に盛り込むべき内容を検討するとよいでしょう。また、婚前契約書がどのような状況下で効力を発揮するかについても確認することが大切です。

    • 婚前契約書の作成
      婚前契約書を作成する際には、直筆かワープロのどちらで作成しても問題ありません。直筆で作成する場合は、ボールペンなどで作成してください。内容を書き間違えた場合は、取り消し線と双方の訂正印によって修正しなければなりません。
      一方、ワープロで作成する場合は、印刷後に誤りが見つかったり変更したりしたい場合は、印刷し直してください。なお、直筆、またはワープロで作成した場合のどちらも、最後に直筆の署名と捺印が必要です。

    • 契約内容のリーガルチェック
      婚前契約書は、法的に有効でなければなりません。そのため、契約内容のリーガルチェックをおすすめします。リーガルチェックとは、弁護士に契約書の内容が法的に問題がないか確認してもらうことです。
      また、契約内容が一方的なものでないかなど、倫理的・道徳的な点についてもチェックすることが望ましいでしょう。契約内容に疑問がある場合は、弁護士に相談し、適切なアドバイスを得ることが大切です。

    • 公正証書にするか検討する
      自分たちのみで作成した婚前契約書は、私文書と呼ばれ、適切に作成できていれば、法的な効力を持ちます。しかしながら、公正証書にすることで、婚前契約書の内容が法的に保証されます。
      私文書を公正証書に変更することで、契約書の証拠力が強化され、将来的な訴訟でも有利になる場合もあるため、婚前契約書は公正証書にしておくことをおすすめします。

2、婚前契約書を作成するメリット・デメリット

続いて、婚前契約書を作成するメリット・デメリットを紹介します。どちらも理解したうえで婚前契約書を作成するか検討するとよいでしょう。

  1. (1)婚前契約書を作成するメリット

    婚前契約書を作成することで、結婚後のトラブルを減らせます。口約束ではお互いに忘れてしまうこともありますが、契約書として正式な書面を残すことで証拠として残せることがメリットです。たとえば、結婚生活で欠かせない家事や育児などのルールを事前に決めておくことで、結婚後の夫婦喧嘩を防止できるでしょう。

    また、婚前契約書の作成を進めていくと、必然的に価値観や考え方をお互いに話し合うことになります。お互いの考え方が異なる場合は、それぞれの立場を理解し、相互に譲り合うことで円満な夫婦生活を望めます。

    お互いを知ることで、離婚自体を防止し、円満な夫婦生活を送るための前向きな取り組みとみることもできるでしょう

  2. (2)婚前契約書を作成するデメリット

    婚前契約書は結婚前に作成する契約書です。契約内容には、お互いの価値観が反映されるため思わぬ一面を知ってしまい、トラブルに発展してしまう可能性があることがデメリットです。

    さらに、婚前契約書を作成する場合、離婚時の取り決めを含めることもあるため、結婚する前に離婚を意識しなければならず、相手の信用を失う恐れもあります。

    また、相手が契約内容に納得できない場合があります。たとえば、相手が夫婦生活のルールや財産分与などの取り決めに不満を抱く場合、契約書の作成が困難になることも考えられます。また、相手方が契約書の作成に反対し、結婚自体も拒否される可能性もあるでしょう。

    婚前契約書は、相手との合意が前提となっています。相手方に理解してもらえない場合、婚前契約書を作成すること自体が困難になるため、相手とのコミュニケーションが重要といえます。

3、作成する際に注意することは?

ここでは、婚前契約書を作成する際に注意することについて解説します。

  1. (1)相手の同意がなければ変更や取り消しができない

    婚前契約書を作成する際には、契約内容について相手方の同意を得ることが非常に重要です。なぜなら、婚前契約書には夫婦生活のルールや、離婚した場合の慰謝料、扶養料の取り決めなどが含まれますが、これらの取り決めを相手に無断で変更したり、取り消したりはできないからです。

    そのため、婚前契約書を作成する際には、相手と内容を共有し、十分に話し合うことが必要です。また、自分勝手に婚前契約書の内容を決定し、相手に無理強いしてはいけません。その場合は契約内容が無効とされる可能性があります。

    なお、お互いの同意があれば婚前契約書の内容を変更、取り消しできます。ただし、単純に文章を修正するなど簡単な手順では法的効力を持ちません。私文書の場合は、訂正したい部分を2本線で消し、その上に入れたい文書を書いて、そのうえで2人分の訂正印を押す、公正証書の場合は、公証役場での打ち合わせが必要になるなどの手順が必要です。

  2. (2)作成しても法的効力がない場合もある

    婚前契約書は、契約内容が法律的に適正であることが必要です。契約内容が不当だったり、法律に反する内容であったりする場合、裁判所では無効とされることがありますそのため、婚前契約書を作成する際には、弁護士によるリーガルチェックを受けてもらうことをおすすめします

    たとえば、婚姻前に財産分与を決める場合、相手方が不利益を被らないように適正な割合で財産を分ける必要があります。また、夫婦負担の分担についても、相手方に過剰な負担を分担できません。このように、契約内容が公正であることが求められます。

4、婚前契約書を作成する場合は弁護士へ相談を

婚前契約書を作成する際には、記載内容の漏れや不備がないようにすることが重要です。
弁護士に相談せずに自分たちだけで作成することも可能ですが、契約内容が法的に有効でない場合もあるでしょう。そのため、婚前契約書を作成する際には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、両者の要望や条件を踏まえながら、婚前契約書の作成方法や契約内容の選択肢について法的なアドバイスすることが可能です。

5、まとめ

この記事では、婚前契約書の概要や作成するメリット・デメリット、注意点について解説しました。

婚前契約書は、結婚後の生活や財産分与、共有財産などを結婚前にあらかじめ決める契約です。夫婦になろうとする男女間の合意の下で契約を結ぶことになるので、原則として法的効力を持ちます。お互いの価値観を夫婦となる前にすり合わせられるため、将来的なトラブルを防げることがメリットといえます。ただし、相手に理解してもらえない場合は結婚そのものにまで影響が出る可能性もあります。また、婚前契約書を作成するには契約内容について、法的な知識が欠かせません。弁護士からのアドバイスを受けることがおすすめです。

婚前契約書を作成したいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています