不倫した夫もしくは妻に「離婚したい」と言われたときの対処法と慰謝料請求

2025年03月26日
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不倫した夫もしくは妻に「離婚したい」と言われたときの対処法と慰謝料請求

不倫をしている夫のことを「シタ夫」、不倫をしている妻のことを「シタ妻」と呼ぶことがあります。配偶者による不倫が発覚すると夫婦関係が悪化し、離婚に至る夫婦も多いですが、シタ夫、シタ妻の側から離婚を求められた場合、相手方配偶者としてはどのように対応すべきなのでしょうか。

自分が不倫をしておいて離婚まで求めてくるシタ夫、シタ妻の態度に憤慨する気持ちもよくわかりますが、有利に離婚を進めるためには冷静に対応することが大切です。離婚に向けて準備すべき事項もいくつかあるため、慌てて離婚を切り出すのではなく、しっかりと準備を整えてから話し合いを開始するのが得策でしょう。

今回は、シタ夫、シタ妻から「離婚したい」と言われたときの対処法と離婚に向けた準備などについて、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。


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1、不倫をした夫もしくは妻から「離婚したい」と言われたら、離婚しなければならない?

シタ夫、シタ妻から「離婚したい」と言われた場合、相手方配偶者としてはどのように対応すればよいのでしょうか。以下では、相手方配偶者側の具体的な対応方法を説明します。

  1. (1)有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない

    シタ夫、シタ妻から離婚を求められた場合、まずは、離婚に応じるか否かを決める必要があります。
    離婚に応じるのであれば、シタ夫、シタ妻との話し合いにより離婚条件などを取り決めて、離婚をすることができます。
    他方、離婚に応じない場合には、話し合いが決裂となり、シタ夫、シタ妻の側から離婚調停の申し立てがなされることもあります。しかし、離婚調停も協議離婚と同様に基本的には話し合いの手続きですので、離婚を拒否すれば調停不成立となり、離婚が成立することはありません

    調停が不成立となると最終的にシタ夫、シタ妻は、離婚裁判を起こすしか手段は残されていません。しかし離婚裁判を提起するためには、裁判で離婚が認められるための具体的な理由(法定離婚事由)に該当する必要があります。しかし、「有責配偶者(婚姻関係を破綻させる原因を作った側)」からの離婚請求は、原則として認められないことになっています。なぜなら、有責配偶者による離婚請求が認められないのは、自分の不貞行為が原因で夫婦関係を破綻させたにもかかわらず、その本人による離婚請求を認めるのは信義誠実の原則に反すると考えられているからです。

    不倫をした夫もしくは妻は、有責配偶者にあたるため、後述する例外的なケースにあたらなければシタ夫、シタ妻の離婚請求は棄却されるでしょう。

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  2. (2)勝手に離婚届を出される可能性があるため「離婚届の不受理申出」を行う

    シタ夫、シタ妻から「離婚をしたい」と言われても、離婚すべきかどうかすぐに判断できない方も多いと思います。
    答えを出せずに迷っている間に、シタ夫、シタ妻が勝手に離婚届を提出する可能性もあるため、離婚届が受理されるのを防ぐためにも、市区町村役場に「離婚届の不受理申出」を行うようにしましょう

    勝手に離婚届を提出されたとしても、離婚を無効にすることができますが、そのためには協議離婚無効確認調停や離婚無効確認訴訟の手続きが必要になります。時間と手間のかかる手続きになるため、そうなる前に早めに「離婚届の不受理申出」を行ってください。

2、不倫をした夫もしくは妻からの離婚請求が認められる例外的なケース

不倫をした夫もしくは妻は有責配偶者にあたるため、不倫をした夫もしくは妻からの離婚請求は原則として認められません。しかし、以下のようなケースに該当する場合には、例外的に不倫をした夫もしくは妻からの離婚請求が認められる可能性があります。

  1. (1)シタ夫、シタ妻が不倫する前から夫婦関係が破綻していた

    シタ夫、シタ妻による不倫があったとしても、それ以前から夫婦関係が破綻しており、シタ夫、シタ妻による不倫が夫婦関係破綻の直接的な原因ではないと考えられる場合には、シタ夫、シタ妻からの離婚請求が認められるかもしれません。

  2. (2)相手方配偶者も不倫をしていた

    相手方配偶者もシタ夫、シタ妻と同様に不倫をしていた場合には、どちらも同程度の責任があるといえます。このような場合には、シタ夫、シタ妻だけが一方的に悪いわけではありません。そのため、有責配偶者にはあたりますが、離婚請求を認めたとしても信義誠実の原則に反するとはいえませんので、シタ夫、シタ妻による離婚請求が認められる可能性があります。

  3. (3)別居期間が長期間で一定の要件を満たすとき

    シタ夫、シタ妻が有期配偶者に該当する場合でも、判例上、以下の要件の全部または一部を満たす場合には、有責配偶者からの離婚請求が認められてしまう可能性があります。

    • 別居期間が相当の長期間に及ぶこと
    • 夫婦間に未成熟の子どもがいないこと
    • 離婚により配偶者が精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状態に置かれることがないこと


    判例で有責配偶者からの離婚請求が認められた事案では、別居期間が約36年にも及んでおり、夫婦間には未成年の子どもが存在していませんでした。そして、財産上の給付(財産分与、慰謝料)も提示されていました(最高裁昭和62年9月2日判決)。
    このように有責配偶者からの離婚請求であっても、例外的に認められるケースがあるため、今までの夫婦関係から考えて裁判所に離婚請求が認められそうだと思われる場合には、弁護士に相談して、詳しくアドバイスしてもらうとよいでしょう

3、離婚を決断したときに考えておきたい4つのこと

離婚を決断したときは、以下の4つのことを考えておく必要があります。

  1. (1)不倫の慰謝料請求

    シタ夫、シタ妻に対しては、不倫の慰謝料を請求することができます。不倫慰謝料の相場は、100~300万円程度になりますが、夫婦の状況や不倫の状況によって金額は大きく変動します。
    不倫の慰謝料が高額になりやすいケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。

    • 夫婦の婚姻期間が長い
    • 不倫期間が長い
    • 不倫回数が多い
    • 複数の相手と不倫をしていた
    • 不倫の主導的な立場にあった
    • 不倫が原因で離婚に至った
    • 不倫相手を妊娠させた
    • 不倫された妻が精神疾患を患った


    このような不倫慰謝料をシタ夫、シタ妻に請求するには、相手方配偶者の側で不倫の証拠を集める必要があります。証拠がない状態で慰謝料請求をしても、シタ夫、シタ妻に否定されてしまえばそれ以上追及することができず、証拠を処分されてしまうリスクもあります。
    そのため、不倫の慰謝料請求をする際には、事前に十分な証拠を確保してから話し合いを始めるようにしてください。

  2. (2)離婚条件

    シタ夫、シタ妻と離婚をする際には、不倫の慰謝料請求以外にも親権を決める必要があり、財産分与、養育費、面会交流、年金分割などの離婚条件の取り決めについても検討する必要があります。
    シタ夫、シタ妻に離婚を切り出す前に、どのような条件で離婚を希望するかを明確にしておくことで、スムーズに話し合いを進めることができます。離婚条件には決め方や相場などがあるため、適切な条件で離婚を成立させるためにも、一度弁護士に相談した方がよいでしょう。

  3. (3)公正証書作成

    シタ夫、シタ妻との話し合いにより離婚および離婚条件について合意が成立したときは、必ず離婚協議書を作成するようにしてください。協議離婚では、離婚届を提出するだけで離婚ができてしまうため、離婚協議書の作成は義務ではありません。しかし、書面により合意内容を残しておかなければ、後から「言った言わない」のトラブルになるリスクがあるため、離婚協議書の作成が重要になります。

    特に、離婚条件に養育費、慰謝料、財産分与といった金銭の支払いが含まれている場合は、公正証書の形で離婚協議書を作成するのがおすすめです。強制執行ができる内容の公正証書にしておくことで、将来、シタ夫、シタ妻が金銭の支払いを怠ったとしても、強制執行をすることができるため、滞納分の回収がしやすくなります。

  4. (4)離婚後の生活

    シタ夫、シタ妻と離婚をすると、別々に生活をすることになり、離婚後の生活の拠点を見つける必要があります。また、離婚後は自分の収入のみで生活していかなければなりませんので、職探しが必要となることもあります。
    生活の拠点や収入の見込みがなければ安心して離婚に踏み切ることができませんので、離婚後の生活に関する準備も早めに進めていきましょう。

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4、不倫が原因の慰謝料請求や離婚問題を弁護士に相談するメリット

不倫が原因の慰謝料請求や離婚問題でお悩みの方は、以下のようなメリットが受けられるため、弁護士に相談するのがおすすめです

  1. (1)離婚の流れや離婚条件についてアドバイスしてもらえる

    離婚は、一般的に協議離婚、調停離婚、裁判離婚といった流れで進んでいきますが、実際にどのような手続きを選択すべきかについては、夫婦の状況によって異なります。また、取り決めるべき離婚条件も変わってきます。
    弁護士に相談をすれば、ご自身の状況に応じて、最適な離婚の手続きや離婚条件についてアドバイスしてもらうことができるため、弁護士のアドバイスに従って行動すれば、スムーズに離婚を成立させられる可能性が高くなります。

  2. (2)シタ夫、シタ妻との離婚交渉を任せることができる

    シタ夫、シタ妻との離婚を決断したときは、まずはシタ夫、シタ妻との話し合いが必要になります。
    しかし、不倫をした相手方配偶者と話すのが苦痛に感じる方や顔を合わせたくないという方もいるでしょう。そのために、不倫発覚後の夫婦関係によっては話し合いが困難なケースも少なくありません。
    このような場合には、弁護士に依頼をすれば、弁護士が代わりにシタ夫、シタ妻との交渉を担当することができます。弁護士が離婚交渉をすることで、ご自身は相手と顔を合わせる必要がなくなりますので、精神的な負担を大幅に軽減することが可能です。

  3. (3)調停や裁判手続きにも対応してもらえる

    シタ夫、シタ妻との話し合いでは離婚や離婚条件の合意に至らなかった場合は、離婚調停や離婚裁判といった法的手続きが必要になります。
    離婚問題に関する知識や経験に乏しい方では、調停や裁判に対応するのは困難だといえますので、弁護士によるサポートがあると安心です。弁護士に依頼すれば調停への同行や裁判の期日の対応などを任せることができますので、不安や負担を軽減できます。
    裁判に発展しても慌てずに対処できるように、早めの段階から弁護士に依頼するといいでしょう。

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5、まとめ

夫もしくは妻の不倫が発覚した場合、離婚をするかどうかの選択権は相手方配偶者側にあります。離婚をしないで再構築を選択した場合には、再び不倫をするのを防ぐためにも誓約書を作成するのがおすすめです。
シタ夫、シタ妻との離婚を決断した場合、離婚の進め方や離婚条件について、専門家である弁護士によるアドバイスを受けることで適切に交渉が進められるでしょう。
不倫や離婚のトラブルでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスまでお気軽にご相談ください。

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