任意整理において、返済額が減る場合と減らない場合をそれぞれ解説
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任意整理は、借金返済の負担を軽減できる債務整理手続きの一つです。
ただし、任意整理をしても、月々の返済額は減らないことがあります。状況によっては他の債務整理の方法を選択すべき場合もあるため、債務整理を検討されている方はまずは弁護士にアドバイスを求めましょう。
本コラムでは、任意整理をしても月々の返済額が減らないケースや、任意整理以外の借金問題を解決する方法などについて、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。
1、任意整理をしても、借金の元本は減らないことが多い
「任意整理」とは、裁判所が関与する手続きではなく、債権者と直接交渉して、債務のカットや返済期日の変更など今後の支払い条件を見直してもらう手続きです。
任意整理をすると、債務負担を軽減できる可能性があります。
ただし、過払い金がある場合を除いて、任意整理では元本はカットされないことが多いという点に注意しましょう。
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(1)任意整理でカットされるのは利息・遅延損害金のみ
借金について返済する必要がある債務は、元本・利息・遅延損害金の三種類に分かれます。
- (a)元本
当初借り入れた金額です。 - (b)利息
元本使用の対価として支払う金銭です。借入日(の翌日)から返済期日まで発生します。 - (c)遅延損害金
返済が遅れたことに伴う損害賠償金です。返済期日の翌日以降に発生します。
任意整理によってどの程度債務がカットされるかは、債権者との交渉によって決まります。
実務上、任意整理によってカットされるのは、基本的に利息および遅延損害金のみです。元本のカットが認められることはほとんどありません。
他の債務整理手続き(自己破産・個人再生)では元本のカットが認められることに比べると、任意整理は債務の減額効果が小さいため、多額の債務を負担している方にとっては不向きといえるでしょう。 - (a)元本
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(2)過払い金がある場合は、元本が減る
「過払い金」が発生している場合には、任意整理と併せて過払い金請求を行うことで、借金の元本を減らせる可能性があります。
過払い金とは、利息制限法の上限を超えて支払った金利のことです。
平成22年(2010年)6月17日以前は、利息制限法を超える金利(グレーゾーン金利)についても、任意弁済を有効とする規定が設けられていました。
その結果、多くの貸金業者がグレーゾーンによる貸付けを行っていました。
しかし、最高裁の判例によってグレーゾーン金利の支払いは無効とされたことから、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律が改正され(平成22年6月18日施行)、債務者は貸金業者に対して過払い金請求ができるようになりました。
そのため、平成22年6月17日以前に貸金業者からお金を借りた場合、過払い金を請求できる可能性があります。
過払い金は、借金の利息だけでなく元本にも充当されます。
任意整理と併せて過払い金請求を行えば、元本を減額(場合によっては完済)することが可能です。
2、任意整理をしても、月々の返済額は減らないことがある
任意整理をしても、月々の返済額が減るとは限りません。
元本の返済額が少ない場合には、月々の返済額が増えてしまうこともあります。
しかし、任意整理を行うと膨らみ続ける利息をカットすることができるので、長期的に見れば、約定どおりに借金を返し続けるよりも、任意整理をした方がトータルでの返済額を抑えることができるのです。
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(1)任意整理後に月々の返済額が減るケース
任意整理をすると、今後発生する利息と遅延損害金のカットが認められることが多いです。この場合、ほとんどのケースでは月々の返済額も減ります。
たとえば、分かり易い例として借金の元本が残り300万円、利率が15%とします。
毎月10万円を返済している場合、約78万円の利息を支払ったうえで、3年2か月での完済となります。
任意整理によって今後発生する利息をカットしたうえで、元本300万円を36回払いで分割返済する合意をした場合、月々の返済額は8万3333円です。
元の返済額は毎月10万円なので、返済総額を減らしつつ、月々の返済額も減らせたことになります。 -
(2)任意整理後に月々の返済額が減らないケース
これに対して、借金の元本が残り300万円、利率が15%で、毎月7万円を返済しているとします。
先ほどのケースと元本額・利率は同じですが、毎月の返済額が3万円減った状態です。この場合、約132万円の利息を支払ったうえで、5年2か月での完済となります。
先ほどのケースと同じく、任意整理によって今後発生する利息をカットしたうえで、元本300万円を36回払いで分割返済する合意をした場合、月々の返済額は8万3333円です。
しかし、元の返済額は毎月10万円なので、月々の返済額は増えてしまいます。
このケースで月々の返済額を減らすには、今後発生する利息をカットした後の元本返済を43回払い以上としなければなりません。
ただし、回数の多い分割払いを認めてくれるかどうかは、債権者次第です。
債権者が応じてくれなければ、月々の返済額が増える任意整理案に同意せざるを得ないこともあります。
長期的に見れば、任意整理をすれば返済総額が減り、借金返済の負担が軽くなります。
しかし、短期的に返済負担が増えて、それが生活を圧迫する場合には、他の債務整理手続きを選択することも検討すべきでしょう。
3、任意整理以外の借金問題を解決する方法
任意整理以外の債務整理手続きには、主に「自己破産」と「個人再生」があります。
いずれも任意整理に比べて債務の減額効果が高い手続きであるため、債務が多額に及ぶ方や多重債務の方は、自己破産や個人再生を積極的に検討することをおすすめします。
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(1)自己破産
自己破産は、財産を処分して債権者に配当した後、残った債務全額を免責する裁判手続きです。
支払不能又は債務超過に陥った方であれば、収入状況などにかかわらず自己破産を申し立てることができます。
自己破産は、債務全額の免責が認められる強力な債務整理手続きですが、財産を処分されてしまうのが難点です。
借金額が多額に及ぶ方、多重債務状態にある方、無職の方、財産をほとんど持っていない方などにとっては、自己破産が有力な選択肢となるでしょう。 -
(2)個人再生
個人再生は、原則として債権者全員との間で、債務を圧縮して返済スケジュールの変更を取り決める裁判手続きです。
個人再生では、任意整理とは異なり、元本の減額も認められます(最低返済額:100万円)。債権額カットに反対する債権者との間でも、個人再生手続きを通じて再生計画が決議・認可されれば、その内容に応じて債務を減額することが可能です。
担保権付きの財産は処分されてしまうのが原則ですが、住宅ローンが残っている土地・建物については、再生計画に住宅資金特別条項を定めることで、処分を回避できる可能性があります。
ただし個人再生を利用できるのは、安定した収入がある方に限られます。
会社員や公務員などで、収入に比べて債務が多すぎる方、マイホームを残しつつ債務負担を軽減したい方などは、個人再生を検討しましょう。
4、債務整理について弁護士に相談すべき理由
借金の返済負担が苦しく、債務整理によって解決を図りたい場合は、以下のような理由から、弁護士に相談することをおすすめします。
- 適切な債務整理手続きを選択できる
- 任意整理の交渉を一任できる
- 法的手続きの対応も任せられる
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(1)適切な債務整理手続きを選択できる
任意整理・自己破産・個人再生の各債務整理手続きには、それぞれにメリットとデメリットの両面があります。
効果的に債務負担を軽減するためには、適切な債務整理手続きを選択することが大切です。
弁護士に相談すれば、ご自身の状況に合った債務整理手続きについてアドバイスを受けることができます。 -
(2)任意整理の交渉を一任できる
任意整理に関する債権者との交渉は、弁護士に一任することができます。
債務者自身は立場的に債権者と任意整理の交渉を行うことが難しいですが、弁護士であれば交渉を行うことができます。
そして、弁護士であれば、依頼者の債務や収入の状況をふまえながら、依頼者にとって無理がなく、債権者にとっても受け入れやすい返済計画を立案したうえで交渉を行うことができるので、交渉が成功しやすくなります。 -
(3)法的手続きの対応も任せられる
自己破産や個人再生を申し立てる際には、申し立ての準備や手続きへの対応も弁護士に任せることができます。
自己破産や個人再生は、債務を免れるという強力な効果が得られる反面、多数の債権者に大きな影響を及ぼすことになります。そのため、申立てに当たっては厳密に判断する必要があり、数多くの書類を準備しなければなりません。実際の手続きも長期間にわたるため、根気強い対応が求められます。
弁護士に依頼すれば、依頼者本人の負担を大幅に軽減しつつ、自己破産や個人再生を通じてスムーズに借金問題を解決することが可能です。
5、まとめ
任意整理をすると、毎月の返済額が減るとは限りませんが、トータルでの借金返済額は減ります。
従前の返済状況次第によっては、月々の返済額が増えてしまうこともある点に注意しましょう。
任意整理・自己破産・個人再生のなかで、どの手続きを選択すべきであるかは、債務者の状況によって異なります。
適切な債務整理手続きを選択するためには、早い段階から弁護士のアドバイスを受けることが大切です。
ベリーベスト法律事務所は、債務整理に関するご相談を承っております。
借金返済が苦しく、自力での解決が難しいと考えられている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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