事故のあとから背中に痛みが出たらどうすべきか|治療と慰謝料請求
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令和5年に長野県で発生した交通事故は5006件で、死亡者数は42名でした。
交通事故に遭った際、事故当時はけががなかったように見えても、あとから背中などに痛みが生じるケースがあります。交通事故被害に遭ってから、時間がたっていても、医療機関で事故によるけがと診断された場合は、損害賠償を請求できる可能性があります。
本記事では、交通事故のあとから背中に痛みを感じた場合の主な痛みの原因や、あとから痛みが出てきた場合の対処法などをベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和5年交通統計(長野県)」(長野県警察)


1、交通事故の数日後から背中に痛みが出る主な原因
交通事故に遭った後、時間がたってから背中に痛みが出る主な原因としては、頸椎捻挫(むちうち)や椎間板ヘルニアが挙げられます。それぞれ詳しく紹介します。ただし、自己判断は難しいため、医療機関で症状を確認してもらいましょう。
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(1)頸椎捻挫(むちうち)
「頸椎捻挫(けいついねんざ)」とは、頸部(首)に強い負荷がかかった結果、その周囲の筋肉・靭帯・神経・血管などの組織が損傷された状態を意味します。「むちうち」と呼ばれることもあります。
頸椎捻挫であるかどうかは、多くの場合、外から見ただけではわかりません。しかし、頸部周辺の内部組織が損傷を受けている場合は、その部分があとから痛み出すケースがあります。
また、首の痛みをかばうために背中の筋肉が強く緊張した結果、背中のハリや痛みにつながることも少なくありません。
頸椎捻挫の治療期間は2か月から3か月以内が標準的ですが、痛みが残る場合には半年以上の通院を要することもあります。
仕事などを理由に通院を継続しないと、あとから痛みが出てくることがあります。また、痛む部位をかばおうとして、他の部位に負担がかかってしまい、別の痛みが出てくることもあります。
そのため、事故後は、無理をせずに、しっかりと治療を受けるようにしてください。 -
(2)椎間板ヘルニア
椎間板(ついかんばん)ヘルニアとは、背骨の間にある椎間板の一部が飛び出し、周りの神経を圧迫することによって痛みや痺(しび)れなどが引き起こされた状態です。交通事故によって背骨に強い衝撃が加わると、椎間板が変性または断裂し、椎間板ヘルニアを発症することがあります。
椎間板ヘルニアの自覚症状は、事故後数日たってから生じるケースもあります。治療期間は2か月から3か月程度が標準的で、薬物療法やリハビリなどで症状の緩和や改善を目指す、保存療法が選択されることが多いです。
2、交通事故のあとから痛みが出てきた場合にすべきこと
交通事故に遭った後、時間がたってから背中などに痛みが出てきたときは、以下の対応を行いましょう。けがの保険金や慰謝料を正しく受け取るためにも、いずれの手順もなるべく早く行ってください。
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(1)すぐに医療機関を受診し、診断書を取得する
痛みが生じたら、速やかに医師の診察を受けることが大切です。
早期に医師の診断を受けることで、適切な治療による症状の改善につながります。また、事故後まもなく医師の診断を受けて、MRI検査などを受けることによって、交通事故とけがの間の因果関係を立証しやすくなります。
なお、痛みのケアについては整骨院・接骨院や整体師なども行っていますが、交通事故によるけがについては、必ず整形外科などの医師の診断を受けるべきです。
交通事故によるけがの原因は、医学的な検査を行わなければ正確には分からないケースが少なくありません。真の原因がわからないまま間違った療法を受けると、かえって症状が悪化してしまうおそれもあるので、まずは医療機関の受診をおすすめします。
けがについて医師の診察を受けたら、その内容に関する診断書を発行してもらいましょう。医師の診断書は、後述する人身事故への切り替え申請や、保険会社に対する連絡などの際に必要となります。なお、整骨院・接骨院や整体師などの医療行為が行えない場所では、診断書を発行してもらえませんので、注意しましょう。 -
(2)警察署で人身事故への切り替えを申請する
今回の交通事故について、警察官へ物損事故(けが人が出ず、自動車などの物のみに損害が発生した事故)として報告していた場合には、警察署で人身事故への切り替え申請を行ってください。
人身事故への切り替えが受理された場合、実況見分が行われます。実況見分とは、警察官などの捜査機関が現場を検証し、事実確認などを行うことを指します。実況見分の結果をまとめた実況見分調書は、交通事故の状況を立証するための客観的な証拠として有用です。
人身事故への切り替えを申請する際には、以下の書類などが必要です。具体的な必要書類については、提出する警察署の担当者にご確認ください。- 医師の診断書
- 運転免許証
- 車検証
- 自賠責保険証
物損事故から人身事故への切り替えは、時間が経過すると警察署は応じてくれなくなりますので、なるべく早く切り替えの手続きを行ってください。 -
(3)保険会社へ連絡する
物損事故から人身事故に切り替えた場合には、その旨を自分と加害者側、双方の保険会社に連絡しましょう。
保険会社に連絡した際には、人身事故としての交通事故証明書の提出を求められます。事故を証明する交通事故証明書には、事故の日時や場所、当事者氏名が記載されています。交通事故証明書は、全国各地にある自動車安全運転センターに申請して交付を受けましょう。
3、交通事故のあとから痛みが生じた場合も、損害賠償は請求できる?
交通事故に遭った後、時間がたってから痛みが生じた場合にも、加害者側に対して損害賠償を請求できるのでしょうか? 詳しく紹介します。
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(1)因果関係を立証できるかどうかがポイント
交通事故の加害者は、事故によって被害者に生じた損害を賠償する責任を負います。
ただし、加害者が損害賠償責任を負うのは、事故との間に因果関係がある損害のみです。
けがの原因が交通事故であるかどうかが不明な場合(=別の原因によってけがが生じた可能性がある場合)には、加害者側に対する損害賠償請求は認められません。
交通事故の発生後、医療機関を受診するまでの期間が長くなればなるほど、因果関係の立証は難しくなります。交通事故が原因と思われる痛みが生じたら、先述のとおり、すぐに医療機関を受診し、保険会社や警察署へ連絡をしましょう。 -
(2)加害者側に対して請求できる主な損害賠償項目
交通事故による身体の痛みについて、加害者側に請求できる損害賠償の項目としては、以下の例が挙げられます。
- 治療費:けがの治療やリハビリにかかった費用全般です。原則として、実費相当額の損害賠償が認められます。
- 通院交通費:けがの治療やリハビリのため通院した際に要した交通費です。公共交通機関を利用した場合は、合理的な範囲内の実費相当額、自家用車を利用した場合には、距離に応じた金額の損害賠償が認められます。また、利用の必要性がある場合に限り、タクシー代の損害賠償も認められることがあります。
- 装具、器具購入費:けがの治療やリハビリのために必要な装具や器具の購入費用です。合理的に必要な範囲内の実費相当額の損害賠償が認められます。
- 休業損害:けがの治療やリハビリのため、またはけがの影響によって仕事を休んだ場合に、得られなかった収入分の賠償です。事故前の収入額を基準に、日割りで休業損害の額を計算します。有給休暇を取得した場合にも、休業損害の賠償を請求できます。
- 付き添い費用:入院や通院に家族が付き添った場合の、家族の休業損害(逸失利益)を指します。また、看護師や介護士などの専門職(職業付添人)が付き添った際の依頼費用も、付き添い費用に含まれます。家族が付き添った場合は、入院であれば1日当たり6500円程度、通院であれば1日当たり3300円程度の付き添い費用が、必要に応じて認められるでしょう。職業付添人が付き添った場合は、合理的に必要な範囲内の実費相当額の付き添い費用が認められます。ただし、上記費用の目安は弁護士に依頼すると利用できる裁判所基準によるものです。自賠責保険や任意保険基準を用いる場合には、費用目安が異なります。
- 入院雑費:入院時に日用品などを購入するための費用です。必要に応じて、1日当たり1500円程度の入院雑費が認められます。
- 入通院慰謝料:けがによって入院や通院を強いられたことに伴う精神的な損害の賠償金です。入院期間や通院期間に応じた額の入通院慰謝料が認められます。
- 後遺障害慰謝料:けがが完治せず後遺症が残ったことに伴う精神的な損害の賠償金です。後遺症の部位や症状などによって認定される、後遺障害等級に応じた額の後遺障害慰謝料が認められます。
- 逸失利益:後遺症によって労働能力が失われた場合に、将来にわたって得られなくなった収入です。事故前の収入額、年齢から計算する労働能力喪失期間、および後遺障害等級に応じた労働能力喪失率などを用いて計算した額を指します。
4、交通事故の被害に遭ったら弁護士に相談を
交通事故の被害に遭った方は、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は、被害者が適正な損害賠償を受けられるよう、サポートを行えます。たとえば、損害内容の把握・損害額の計算・後遺障害等級認定の申請・示談交渉などの相談に乗ることが可能です。
また、慰謝料算定基準には自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準の3種類がありますが、弁護士に依頼すると、慰謝料算定でもっとも高額になることが多い算定基準である「裁判所基準」を用いることが可能です。これにより、適正額の損害賠償の獲得を目指します。
お問い合わせください。
5、まとめ
交通事故が原因と思われる背中の痛みがあとから出てきたら、速やかに医療機関を受診しましょう。また、損害賠償請求の準備を進める際には、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故に関する被害者のご相談を随時受け付けております。事故のあと、時間がたってから痛みが出てきて、加害者側に対する損害賠償請求をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスへご相談ください。
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