脇見運転とは? 罰則や過失割合、慰謝料について弁護士が解説
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「人身交通事故発生状況(長野県警)」によると、令和6年の長野県では、4970件の交通事故が発生しました。そのうち死傷者数は5993名でした。このなかには、脇見運転によるものもあります。
脇見運転をしている車に衝突等の交通事故を起こされた場合、加害者の過失は大きいとされ、被害者に支払われるべき慰謝料は増加します。
脇見運転の事故で被害者が受け取れる慰謝料・相手が脇見運転を否定したときにできる対処法などを、ベリーベスト法律事務所 長野オフィスの弁護士が解説します。


1、脇見運転とは? 定義・該当行為・過失割合との影響
まずは、そもそも脇見運転とは何か、その定義と具体的な行為について解説します。また、過失割合への影響についても説明します。
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(1)脇見運転の定義
脇見運転とは、何かに気を取られて前方への注意が散漫になっている状態で運転をすることです。脇見運転は、道路交通法第70条が規定する安全運転義務の違反にあたります。
安全運転義務違反による交通事故は、死亡事故となるケースが非常に多く、令和5年には交通死亡事故2618件中1447件にあたる55.3%が安全運転義務違反による事故でした。このうち脇見運転による死亡事故は262件で10%にのぼります。
出典:「令和5年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況>令和5年中の道路交通事故の状況」(内閣府) -
(2)安全不確認・漫然運転・前方不注意との違い
脇見運転と似たものに、安全不確認・漫然運転・前方不注意があります。それぞれの定義を簡単に確認しましょう。
① 安全不確認
安全確認を怠ることを安全不確認といいます。前方・後方はもちろん左右も確認しなければなりません。
② 漫然運転
前を見ながら運転していても、ほかのことを考えたり眠気があったりと、運転に必要な注意力義務を怠ってぼんやり運転していることを漫然運転といいます。
③ 前方不注意
前方不注意は、前方への注意が散漫になり危険を発見できない状態での運転を指します。脇見運転や漫然運転は、前方不注意の一種です。 -
(3)具体的に脇見運転に該当する行為
運転中に次のような行為をすると、脇見運転に該当する可能性があります。
- スマートフォンを操作する
- カーナビを注視する
- オーディオやエアコン調節
- 窓の外の景色に気を取られる
- 隣や後部座席の同乗者のほうを向いて話す
- 車内で落としたものを拾う
スマートフォンなどの使用によって死亡・重傷事故が起こるケースは増加傾向にあり、非常に危険です。
警察庁交通局の発表によると、令和6年においては、スマートフォンなどの使用で死亡交通事故が起こった確率は、使用していなかったときに比べて約3.7倍も高かったことがわかっています。
出典:「令和6年における交通事故の発生状況について」(警察庁交通局)
なお、スマートフォンを操作しながらの運転は、事故が発生しなくても道路交通法違反となるおそれがあるため気をつけなければなりません。 -
(4)過失割合の修正要素への影響
脇見運転は「著しい過失」にあたり、過失割合の修正要素です。脇見運転が発覚すれば、加害者に5~20%の過失割合が加算される可能性があります。
たとえば、基本の過失割合が「加害者:被害者=60:40」だとします。しかし、加害者が脇見運転をしていたとして10%が加算された場合は、過失割合は「70:30」へと修正されます。
実際にどれくらいの割合が加算されるかは、発生した事故の状況によってさまざまです。
2、脇見運転の加害者はどのような責任を負う? 罰則は?
脇見運転で交通事故を起こした加害者は、どのような責任を負うのでしょうか。運転免許にかかわる行政処分と、刑事処分で科される刑事罰について解説します。
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(1)脇見運転の加害者が負う行政処分
行政処分としては、安全運転義務違反の違反点数である基礎点数2点が加算されます。さらに、被害者のケガの重症度によって+αの付加点数2~20点が加算されます。
違反点数は、6点以上になると免許停止処分となるため注意が必要です。違反点数 基礎点数2点+α また、車両の種類によって、反則金として以下の金額が課されます。
反則金 原付車:6000円
二輪車:7000円
普通車:9000円
大型車:1万2000円なお、スマートフォンでの通話や操作による脇見運転で交通事故を起こした場合は違反点数が6点加算となるため、免許停止処分は免れません。
この際、行政処分としての反則金は適用されませんが、罰則として1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑が科される可能性があります。 -
(2)脇見運転の加害者が負う刑事罰
脇見運転の加害者には、刑事罰が適用されるケースもあります。具体的には以下の通りです。
過失運転致死傷罪 7年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金刑のいずれか 危険運転致死傷罪 被害者が負傷:15年以下の拘禁刑
被害者が死亡:1年以上の有期拘禁刑
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3、脇見運転の被害者はどのような賠償を受けられる?
脇見運転による交通事故の被害者は、しかるべき賠償を受け取ることができます。さまざまな請求項目がありますが、実際に受け取れる項目や金額は、事故の内容によって異なります。
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(1)損害賠償金を請求できる項目
脇見運転の被害者は、以下のような損害賠償金を受け取れる可能性があります。
交通事故の損害賠償金の種類
- 治療費
- 通院慰謝料
- 入院慰謝料
- 入通院交通費
- 装具や器具の購入費
- 入院雑費
- 付添費用(家族の付き添いが必要であった場合)
- 休業損害(仕事を休まなければならなかった場合)
- 後遺障害慰謝料(後遺症が残った場合)
- 後遺障害逸失利益(後遺症による労働能力喪失によって得られなくなった収入)
- 介護費用(家族の付き添いが必要であった場合)
- 死亡慰謝料(被害者が亡くなった場合)
- 死亡逸失利益(死亡によって得られなくなった収入)
- 葬儀費用
具体的には入通院の日数・休職の必要性・後遺障害の有無などによって異なるため、不安な方は弁護士にご相談ください。
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(2)適切な慰謝料を受け取るには
交通事故の慰謝料は、事故の内容によって異なります。弁護士が介入することで慰謝料の増額が認められるケースもあるため、被害に遭ったら弁護士に相談するのが一番です。
弁護士は、慰謝料を裁判所基準で計算します。これは、過去の判例をもとに算出されるもっとも法的に適した基準です。加害者側の保険会社が提示してくる慰謝料よりも2~3倍高くなることもあります。
相手方から提示された慰謝料に少しでも納得できないときは、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。
4、加害者が脇見運転を否定している場合の対応方法
脇見運転をしていたにもかかわらず、加害者が否定している場合は、証拠を集めることが大切です。また、法的に適切な結果を得るためには弁護士への相談も重要です。
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(1)証拠を集める
まずは、できる限りの証拠を集めましょう。証拠となり得るのは次のようなものです。
- 事故現場の写真
- 目撃者の証言
- ドライブレコーダーの映像
- 防犯カメラの映像
とくに事故現場の写真は必ず撮影しましょう。脇見運転による事故の場合、運転者が対向車に気づいておらずブレーキ痕が残らないのが特徴です。撮影した写真からブレーキ痕がないことがわかれば、立証しやすくなります。
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(2)弁護士に相談する
自分で集められる証拠が少ない場合や、証拠があると伝えても加害者が脇見運転を否定しているときは、弁護士への相談が有効です。
交通事故の過失割合は、基本的には加害者と被害者による話し合いで決まります。通常、加害者側の窓口として保険会社の担当者が対応します。保険会社の担当者は事故対応に慣れているため、被害者自身が交渉をするのは簡単なことではありません。
弁護士であれば、法的に適切な交渉をすることが可能です。たとえば、弁護士は次のようなことを行います。- 過去の判例に則った過失割合の提示
- 裁判所基準による慰謝料の交渉
- 訴訟に発展したときの代理人対応
5、まとめ
脇見運転は、前方不注意によって重大な事故につながるおそれがあり、加害者には行政処分や刑事罰が科される可能性がある非常に危険な行為です。
脇見運転による交通事故の被害者になったとき、法的に適切な賠償を受けるには事故原因の立証がポイントになります。また、裁判所基準や過去の判例を理解して交渉することが重要です。
納得できる賠償を受け取るためにサポートが必要な方は、ぜひベリーベスト法律事務所 長野オフィスへご相談ください。交通事故問題の解決実績が豊富な弁護士が問題解決に向けてサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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